AI時代の作家と研究を考える

この数年で、表現の制作の概念がまったく変わってしまった。
たとえば音楽。
曲を創るにおいて、楽器が弾けるということが大前提だった。
ぼくもプロでミュージシャンもやっていたわけだが、ギターがなければ自分が創った曲は生み出せてはいない。
だが、ボカロの登場で、楽器が弾けることより、自分の中から生まれてくる自由な表現。
ギターやピアノなどから生み出すという枠に引きずられない、まさにその人間の持つ作家生から発する音や言葉から曲を生み出すことのできる時代になっている。
つまり楽器が弾けなくても、浮かんだ曲を形にすることができるのだ。

その元になるのは、「どういった経験の中で、どういった生き方をしてきたか」で浮かんでくる表現は大きくなっていく。

実際、ボカロによって生まれてきた、米津 玄師やYOASOBI、Adoなどアーチストは、今までにない独自の世界感を持って、世界中で通用し、活躍するミュージシャンになっている。

これはぼくが大学で研究しているマンガの世界でも同じではないだろうか。
本来、マンガは「絵」の表現ができるということが大前提だったのだが、ジェネレティブAIの登場によって、マンガの形も絵以上に大事なものが見えてきている。

きっとこういうことを書くと、AIはデータによって作るのだから、絵の個性が消え、自分だけの、自分しか創れない表現を生み出すことはできないと言ってくるものが多数派だと思う。

では自分だけの表現とは何なのだろうか?

ぼくはマンガでキャラクターを創るときは、「生きている人間」を生み出すために、そのキャラクターがどこで生まれ、どう育ってきたか細かくつねに、そのキャラクターの年表をつくり生み出してきた。

これは、ノンフィクション作家もやっていたことから、たとえばボクシングの世界チャンピオンを書くとなれば、そのボクサーはどういう所で育ち、どういった家族の元で、どういった友だち、恩師、コーチなどどういった出会いがあり、世界チャンピオンになっていったか、「知りたい」を追いかけて細かく彼の生きてきた道を追いかけ取材していく。
当たり前だが、すべて現場に行き、ひとりひとり会って話しを聞き、ぼくの場合は細かく写真も撮ってきている。
すると少しずつ、「生きている人間」として、自分の中でそのキャラクターが見えてくる。

ぼくの場合、マンガの原作の作品も多く、マンガ家とは満に、取材の同行してもらったり、生きてきた道を創り上げることでキャラクターを創り作品にしてきた。
自分の頭の中にある絵(表現)を、なるべくマンガ家には具体的に伝えたいとやってきた。

そのマンガ家に伝えていたことをAIに伝えるとどうなるのだろうか?
自分の頭にある表現を形にすることはできるのだろうか?

そう、楽器に頼らず、楽器に引きずられることなく、自分の頭に浮かぶ音をボカロによって表現するのと同じように、作品を創ることができるのではないか。

ぼくが取材をし、ぼくが感じ、ぼくが感動し、ぼくの中から生まれたものを、AIを道具として創作したものは、間違いなくぼくにしか生み出すことのできない創作になるはずである。

今、いろいろと大学で実験を繰り返している。
自分が取材してきたことをAIにプロンプトで伝え、学習させ、取材で撮ってきた写真を元にキャラクターを創り上げていく。
キャラクターがどう成長していったか、その成長もAIを使い、自分の持つイメージを形にしていく。

Sora2を使い、それを動画にもしてみた。

もちろんうまくいかないこともある。
だが、次々にそれをカバーできる新しい機能を持ったAIも日々生み出されている。

エクスポネンシャルに今、時代は流れている。
今日できなかったことが、明日にはできるようになっている時代だ。

自分の頭の中にある表現は、絵にしろ、音楽にしろ、もっと言えばすべてのことが、イメージすれば形にできる時代がやってきている。

そうなれば、そのイメージを生み出す人間がすべてになってくるはずだ。

作品を今までのような、過去データを学んだり、参考にしたりで作るなら、それはAIに任せばいい。
つまり、自分の生き様から生まれてくるものが作家と呼ばれる時代。

AI時代の作家は、人間にしかできない、自分にしか表現できない自分の生き様、経験、体験から、膨大な視野から生み出される発想を持つことが重要だと思っている。

今回も「旅の空」の動画を創った。
20代に撮りつづけたボクサーの思い出の中の1分間。
旅の空XIX
hidekazu Akai

彼に最初に会ったとき、ぼくが彼を描いたイラストを渡した。
「一番嬉しいプレゼントです」
豪快な彼の笑顔から彼の取材がはじまった。だがリングでの事故…
ボクサーとしての、彼の夢が突然終わった無念。

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