宇宙の終わりから見えてくる未来

仕事場でつけていたテレビから、サイエンスの番組が目に入ってきた。
宇宙の終わりについての番組をやっている。

宇宙誕生は138億年前にビッグバンによって生まれ、そこから膨張し続け、今は数億の銀河が存在する姿へと膨張している。
この先、宇宙はどうなっていくかについて、世界の研究者は、「収縮説」と、「減速膨張説」の二つに集約され研究されていた。
だが、2011年にノーベル物理学賞を受賞した、パームムッター教授によって、宇宙「加速膨張説」が証明されている。
宇宙の超新星爆発の光によって距離を測定し、宇宙の膨張スピードを割り出していったということだ。
教授の研究に関心しながら番組に釘付けになっていく。
宇宙はこの先、膨張しつづければどうなるのか?
理論物理学者のコードウェル教授が宇宙の終焉についての研究説を語っている。
理論上の計算によると、宇宙の膨張速度は際限なく速くなっていき、ビッグリップになるという。
ビッグリップとは、無限の膨張によってすべてが引き裂かれるということだ。
銀河はビッグリップによって重力が振り切られ、銀河の形はなくなり、分子や原子までも引き裂かれていくということだ。

その番組を見ながら今の人間もビッグリップに向かっているのではないのだろうかと思ってしまった。
そもそも宇宙は銀河という「渦」の集合体でできている。
人間もDNAという「渦」によって存在している。
つまり宇宙も人間も同じ存在と考えてしまう。

その「渦」の膨張速度が際限なく速まったときビッググリップになってしまう。

人工知能研究の世界的権威であるカーツワイル博士が2005年に「コンピューターが人類の知性を超えるとき」で、2045年に技術的特異点、シンギュラリティに達すると言っている。
日本でも孫正義氏がシンギュラリティという言葉を使ったことから、日本でも2016年あたりからシンギュラリティに関する考えは広まっていった。

ではシンギュラリティとは何なのか?
一般には、「AIが人間を超えるとき」と言われているが、カーツワイルの言う技術的特異点というのは、人間が想像し、その想像を技術により形していくには、当たり前だが莫大な時間が必要として。
だが、テクノロジーにより、人間が想像したものが、想像とほとんど同じに形となっていく成長度の急速な膨張。
ぼくはそれがシンギュラリティと理解している。

学生にも講義でよく話しているのだが、今の時代というのはテクノロジーによって、エクスポネンシャルに成長している。
つまり、たとえば1歩1メートルとして、2歩目は2メートル、3歩目は3メートル。
30歩進めば30メートルなのだが、エクスポネンシャルの計算は1歩目は1メートル、2歩目は2メートル、3歩目は4メートル、4歩目は8メートルとなっていく。
その計算で30歩進めば、月までの距離を進んだことになるのが、エクスポネンシャルのスピードとなる。
たとえば情報量を見れば、この20年で約7000倍になっていっている。

シンギュラリティとは、エクスポネンシャル的に加速をつけて成長していく技術的特異点となる。
それは膨張速度は際限なく速くなっていき、ビッグリップになっていく宇宙と同じような気がしてならない。

今日も自然に包まれた仕事場のまわりを2時間ほど散歩してきた。
自然の中を歩いていると、「開発」によって便利になるということは、はたして人間にとって「成長」なのかと考えてしまう。
テクノロジーによって便利になる世界。
だが、それが人間の幸せと、成長と思い込んで進んできた今。
それは「成長」ではなく、「膨張」なのかもしれない。

宇宙の終わりについての番組を見ながら、そんなことを考えた。