研究機関であるべく大学としての道

2017年9月30日

NHKでやっていた、秋元康の“100年インタビュー”を見ていたら、今、同時に進めている仕事は100以上だと言っていた。
ぼくが今、抱えている同時に進めている仕事は25弱で、けっこうきついく、「もう60歳だし」と、疲れを年齢のせいにして、病院に行くことも多くなり、睡眠時間も4時間では厳しいと感じ始めていたとき、この秋元康の100以上の仕事を同時に抱えているという言葉。
秋元康とは年齢もさして変わらないもので、こういった同年代のがんばっている情報は実に力が湧いてくる。
がんばらなきゃ!

そんな仕事の中で、NHKと大学とアイディで制作した「トライ~難病ALSと向き合って~」の、モーションドラマがNHK総合テレビの全国放送で放映されることになった。
10月7日(土)午後3時5分~
http://www.nhk.or.jp/utsunomiya/tochilove/try/index.html

 

このドラマはNHKのラジオドラマから始まっている。
ラジオを生き返らせるためにどうするか、数年前にNHKのディレクターと話していて、「今からはラジオはスマートフォンで聞く時代になる」
つまりは「声」だけではなく、「動画」も使えるラジオ番組になるということだ。
そこで問題なのが、やはり制作費となる。
そこで、アニメの10分の一ほどの制作費で制作できるとともに、作家の原画をそのまま動かせる技術と表現なわけだから、まだまだ新しい大きな可能性があると、この作品が生まれていった経緯がある。
そう、「ラジオ革命」が制作にあたっての根底にある作品だ。
つまりは、NHKと組んで「実験」をさせてもらったモーションドラマなので、ぜひ見てもらえればと思っている。

もうひとつロードレースチーム「那須ブラーゼン」の九尾の狐をモチーフにしたキャラクター、「風孤(ふうこ)」が、スマートフォンやタブレットで止まった絵がモーションで動き出すプロモーションを、ARシステムで制作した。
自分のスマートフォンで見てもらえれば、けっこう楽しいと思う。
風孤のキャラクターは、現在、那須のプロジェクトを進めている「姫川明輝先生」のデザインで、これが本当にいいのだ。

【ARシステムで見るための無料ダウンロード】
“スマートフォンのアプリ、App Storeか、Google Playで「COCOAR」で検索し、無料のCOCOARのアプリをダウンロードしてください。
そのアプリを開いて、風孤のマーカーとなっている、ここに載っている風孤の絵に向けてもらえれば認識しスキャンします。
するとスマートフォンの中でキャラクターの一枚絵でしかなかった風孤が自己紹介を始めます。”
ぜひ一度遊びで試してください。

このARシステムを使ってのキャラクター制作は、GPSやビーコンを使っての、キャラクターが街を案内するといった大きなプロジェクトが動いているので、今年中には記者会見する予定で進んでいます。

ここのところブログでは、「大学の意味」について書いてきた。
今の時代の先端で、研究しコンテンツを創っていると、世界において大学がいかに必要になってくるか見えてくる。
とはいえ、今の、日本の高校の延長のような「勉強」できるための大学はまったく必要ない。

高校までは「答え」のある勉強をしてきたと思う。
「答え」があるということは、システムができているということであり、システムというのは機械化されていくことになる。

大学というところは本来、「研究機関」として勉強ではなく研究を通して「スペシャリスト」になるために、専門の大学に来ているはずだ。
卒業するときに、大学で研究し、学んだ「スペシャリスト」としてのスキルを持って、スペシャリストとして就職するなり、企業するなり、フリーとして生きるなりでなければ、まず生きていけない時代になったということだ。

大学を卒業して、大学で得たスキルとはまったく違う場所に就職したとしても、大学で研究してきたはずのスキルを持たずに働ける場所というのは、つまりは作業的な仕事が多くしめてくる。
つまりはスキルを持たなくても働けるという場所ということだ。

考えてもらいたい。
人間は「便利」に生きるために、作業的な仕事は「機械にできないか」と、「人間が便利に生きるため」につねに道具を生み出してきた。

たとえばモノを書いてきたぼくなど、一昔は、作品を制作にあたって、また、取材するにあたっての情報を得るために、図書館を渡り歩き、本屋、古本屋と、とにかく数日、長いときは一ヶ月、資料の情報を得るために時間を費やしてきた。
だが、今は検索すればすべての情報が手に入る。
1時間もあれば、制作、取材前の情報はすべて手に入る、実に便利な時代である。

検索というキーワードが出たので、最近しらべた、この地球上の情報量について書いておく。

2000年にUCバークレー校のピーター・ライマンが、1999年末までに、人類が30万年かけて蓄積した全情報を計算している。
そして、2001年から2003年までの3年間に貯蓄される情報量が、人類が30万年かけて貯蓄してきたすべての情報量を追い抜いてしまったというのだ。
つまりはコンピュータ、インターネットというものが、世界を変えていっているということなのだが、その情報の加速はだれもが肌で感じていると思う。

それでは、今の2017年は、ピーター・ライマンが、1999年末までに人類が30万年かけて蓄積してきた情報の何倍の情報になっているのか、計算してみることにした。

「シンギュラリティ」という新時代を唱えている、未来学者のレイ・カールワイツの、シンギュラリティの定義を支えている概念、「指数関数的な成長」。
そしてインテルの「ゴードン・ムーア名誉会長が1965年に予測した、半導体の集積度」の「ムーアの法則」は、どちらも「18か月(=1.5年)ごとに倍になる」という法則を唱えている。
つまり、この法則で情報量を考えると、1999年までに生まれた30万年の情報量の、今は122880倍の情報量がこの世界に存在していることになる。

たしかに、個人で考えたとき、自分のPC、HD、クラウド、スマートフォンの中に入れてあるデータはこの10年でどれぐらいの量となっているのか…

そういう時代にぼくたちは生きているということである。
すべての成長が「18か月(=1.5年)ごとに倍になる」という、指数関数的に動いている時代である。
そう考えると、ソーラーなど自然エネルギーは現在、たった0.5%のエネルギーの供給源でしかないが、指数関数的成長で考えれば、2026年までには96%が自然エネルギーで賄えることだって可能な数字になってくる。

成長とは研究と考えることができる。
つまり大学は時代を動かす研究機関でなければならない。

それは大学はスペシャリストを育てる研究機関としてでなければ、大学の存在自体も必要のないものになってしまうということである。

でもそうやって考えると、研究機関であるべく大学としての道は実におもしろい。