ぼくの大学での研究テーマは「マンガ・キャラクターを使ったDX研究」である。
マンガに対してみんなが思い浮かべる、少年ジャンプなどで描かれ表現されているようなコンテンツのマンガの研究ではない。
マンガ、キャラクターの持つ「力」と、デジタルという次々と生まれてくる表現法を組み合わせることで、「観光」「メディア」「エンタメ」「医療」「教育」「福祉」などなど、あらゆる分野で、新たなコンテンツ開発ができると考えている。
大学のデジタル研究で注目を集めていると言えば、まず筑波大学の准教授で、メディアアーチスト他、多彩の顔を持つ落合陽一氏の研究テーマでもある「デジタルネイチャー」が出てくると思う。
デジタルネイチャーとは、まさにDXによって人工物と自然物の区別がつかない世界が次々と生まれてくる中での研究である。
ぼくが考えている研究テーマも、その同一線上にある。
だが、ぼくが考えているのは、リアルとバーチャルの区別が付かないのではなく、“リアル”の中に“バーチャル”が存在する、マンガ・キャラクターを使ったDX研究だ。
今、ぼくが関わっているプロジェクトを見てもらえれば、少し理解してもらえると思う。
「プロジェクト9b」
那須において、伝説の九尾狐のキャラクターがARを使い観光案内とともに、その物語を体験してもらう。
https://www.project9b.com/
「嶋子とさくらの姫プロジェクト」
さくら市においてARを使い観光案内とともに、町の歴史を探索してもらう。
このコンテンツは、リアルな「場所」において、伝説、実在のバーチャルな「キャラクター」を組み合わせることで、訪れた人にわかりやすく伝え、興味を持って知ってもらうといったことを目的としている。
そこで生まれてくるのが訪れた人たちの「心」だということだ。
「場所(リアル)」と「キャラクター(バーチャル)」によって、訪れた人たちの「心」を生み出していく。
この発想は、お寺と仏像から得ている。
「リアル」なお寺(場所)に引き寄せられ向かう。
そこには人々の「バーチャル」な世界観をもった仏像(キャラクター)がある。
そこで願いを託し手を合わせることで、個々の自分の中から心を生み出していく。
人は「心」によって、喜びや悲しみ、苦しみたど、すべての感情を生み出し、生きる力、死への絶望と動かされていく。
その「仏像」を、「心」を生み出すことのできるマンガ・キャラクターのバーチャルと、心を感じることのできる「自然」というリアルな中で、「観光」「メディア」「エンタメ」「医療」「教育」「福祉」などなどでできないかと考え研究しているというわけだ。
デジタルでこうやって研究していると、デジタルは冷たく心を感じないという人がまだまだいる。
だが考えてほしい。
仏像にしても、当時のテクノロジーであるノミなどの彫り道具で彫られている。
デジタルも表現するための現代のテクノロジーである道具でしかない。
その道具は、今、だれもが手にしている時代でもある。
たとえばぼくも日々の日課である散歩をしながらiPhoneで撮影し、シンセで音楽を作り、感情のままデジタルで繋げてみた。
心が形となって現れる。
デジタルによって日々の生活の中から「心」を生み出すことができる時代にだれもがいる。
そう、だれもが手元に心を生み出すデジタルな道具を持っているではないか。
そして今からは、スマートグラスなど新しいデジタルのディバイスでの、新しい表現が生まれてくる。
そこにマンガ、キャラクターというバーチャルで「心」を生み出すことのできる現代の仏像で可能性を求めていきたい。
大学の新学期が始まるにあたっての、自分の研究テーマの確認と考えを書いてみた。