イノベーション

2018-9-29

イノベーションとは何なのか。

大学に創った「ちばてつやMANGAイノベーション研究所」でもイノベーションの言葉は使っている。

イノベーションを定義した、20世紀の代表的な経済学者J・A・シュンペーター(1883年2月8日 -~1950年1月8日)はイノベーションを次の5つに分類している。
・新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現
・新しい生産方法の導入
・産業の新しい組織の創出
・新しい販売市場の創出
・新しい買い付け先の開拓

シュンペーターが約100年前に考えた、この考えは、現代のまさにイノベーションを起こしている、Apple、Google、Amazon、Microsoftにピタリと当てはまってくる。

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そう、今、世の中はApple、Google、Amazon、Microsoftに世界中のほとんどの人間が関わった生き方をしているわけだから、この4つがプラットホームとなり、このプラットホームからまた、新たなイノベーションが生まれるという仕組み…

たしかに今、大学で取り組んでいるマンガのキャラクターがARや、VRで情報を発信していくシステムにしても、アプリを創り、iPhone、Androidのスマートフォンをコントローラーとし、iTunes、Googleストアーからダウンロードしてもらわなければだれもが使えるコンテンツとして成立しない。

でもこうやって、イノベーションという概念を生み出した経済学者J・A・シュンペーターの考えを見ると、イノベーションとは、発明ではなく、創造だということがはっきりと見えてくる。
そう考えると、世の中に新しいものを生み出すということは、つまり創造なわけで、その創造的な出来事の99.9%は、「今まで無かった、過去にあった出来事の組み合わせ」だということも見えてくる。

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ここ毎回書いていることだが、大学は間違いなく変わらなければならない。
大学という場所はもともと、実用的な目的を持って、美術、経済、医学、歴史、物理などなど専門分野に分かれている。
もちろんこれは必要で、ひとりの人間がすべての分野で専門家になることなどまず、不可能なこともたしかだ。
だが、ひとつの分野に閉じこもっていると、他の分野で何が起こっているか見えなくなっている。
ぼくは今、美術大学にいるのだが、昨年、教授会で「シンギュラリティによって大学はどうかわらなければならないか」(カーツワイルのこの言葉から、G.N.R革命の説明、2045年問題、スマートフォンで検索できる時代において、教えるとは何か。語学もアプリで同時通訳ができる時代においての語学を学ぶとは何か。情報量は1999年まで人類が30万年かけて蓄積した量が、7年で410倍の情報量になっている今の情報社会においての学びとは何か。2007年生まれからの子どもの平均寿命は100歳を超え、2025年には65歳以上が日本の人口の3分の1をしめることになる。超高齢者会においての社会保障としてのベーシックインカムのことなどなど…)という論文を全先生方に配り、読んでもらったのだが、「何を言っているかわからない」で終わってしまった。

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教授たちは、美術の大学は、美術だけをやっていればいいという考え方で押し通そうとしてきている。
はっきり言うが、それは単なる「楽」をしたいだけなのだと思う。
新しい「知識」を入れるためには「勉強」をしなければならない。
だが、それをやらないというのは、ひとつの専門分野に閉じこもり、他の分野で、この世界で何が起こっているのか見えてなく、べつにそんなことなど知らなくていいと、「楽」をしているということだ。
だが今、時代は大きく流れている。
まさにイノベーションが凄い勢いで世界中で起こっている。

その中で生きていくには、経済的要因を考え、政治的要因を考え、文化的要因を考えと、
美術、経済、医学、歴史、物理など、学問的横断的なアプローチで知識を得なければ想像ができない時代になっていると思う。

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ぼくはいつも学生に言う言葉がある。
「知識」がなければ「想像」はできない。
たとえばAIの知識がなければ、AIとマンガを結びつけたコンテンツのイメージはわかない。
人間は「想像」し、それを形にしたいと考え、研究し、数々のモノを「形」としてこの世に生んできた。
「想像」がなければ、形は生まれてこない。
研究ではなく、専門学校のような経営をしている大学はまさに、専門分野の「知識」しかなく、専門分野の「想像」しかできない、大学であるにかかわらず、世界から取り残された場所になりつつある。

そう考えると、イノベーションのイメージが見えてくると思う。
現代のイノベーションを生み出すのは、学問的横断的なアプローチに立った「知識」と「想像」だと見えてくるはずだ。