リアルの上にテクノロジーは存在する

2020-6-30

腰を痛めたので、先週は大学の授業を東京の仕事場からオンラインですべて進めてみた。
ゼミ・講義・blenderの3Dレクチャー・Aftereffectレクチャーすべてさしたる問題もなく、逆にデータの受け渡し、また画面を共有して作品アドバイスなど、大学で直接やりとりするより効率よく授業が進められる利点もわかってきた。

もちろん、教室や研究室でリアルなやりとりをしていた「習慣」が、パンデミックで一転しているわけだから、「今までのように」とはいかないこともいくつもある。

おもしろいもので、少し前、車のCMで、矢沢永吉が言っていた「2種類の人間がいる。 やりたいことやっちゃう人と、やらない人」というのがあった。

まさにその通りで、生活習慣が変わったとき、「やっちゃう人」と「やらない人」というので生き方が大きく変わっていく。

「やらない人」というのは、「今を考えない人」ととらえればわかりやすいかもしれない。
「やっちゃう人」というのは、今まで通りができないなら、補充ではなく、根本から発想を変えてみようと、創造としての「今を考える人」である。

考えるということは、必ず「想像」から始まる。
「こんなことができないだろうか?」
その想像が、研究となり新しい時代を生み出していく。

最近のニュースを見ていると、人間というのは窮地に追い込まれれば追い込まれるほど、新しい想像からのコンテンツを生み出し、生きるためのイノベーションが次々と生み出されていっている。

たとえば、昨年の夏、中国の普通の公園にまで置いてあった自動販売機で老人が、顔認証で、ただボタンを押すだけで飲み物など買っていたことに驚いたのだが、今は、顔認証と視線だけで、触れるという行動なしに認識してしまうコンテンツが生み出されている。

つまり自分の視線が、パソコンでいうポイントになり、すべての空間がディスプレイという発想だ。
そう考えると、新しい想像がどんどん湧いてくる。

ここ二年ほど、今考えていることに取り入れたいと注目している技術に、hapticsという感触表現があり、味覚もバーチャルで表現できる研究が進んでいる。
5Gになって可能性が出てきたと思っていたのだが、今の流れの中で、それも近くコンテンツ化されていくと感じている。
オンラインで、同じ味覚のものを食べ合い、触れあって飲み会だってできるということだ。

今回のパンデミックによって、2045年に来ると言われているシンギュラリティ自体がもっと早く、自分が生きているうちに、その時代を体感できるかもしれない。
シンギュラリティは、AIが人間を超えるなどと言われているが、そうではなく、人間が想像したものが、一瞬にしてコンテンツ化される時代とぼくは解釈している。

こういったことを書くと、大学の授業などもそうだが、人は対面し、同じ空間というリアルが心を生むものだと、デジタルは血が通ってないなど、今まで散々言われてきているのだが、実はリアルとテクノロジーは同じ方向を向いているのだと何度も言ってきている。

テクノロジー・イコール・リアルを、「常識」として刷り込まれてしまっているのか、デジタルでコンテンツを創ると、必ず「心」が通っていないといったことを言ってくる人たちがいる。

たとえば奈良の大仏は天平の疫病大流行(天然痘)によって、当時の日本の総人口の25–35パーセントにあたる、100万–150万人が感染により死亡したとき、社会不安を取り除き、国を安定させるために造られたものだ。
大仏を造るというのは、当時最高のテクノロジーによって造られたものであり、人々は「心」を生み出し、心の支えとなり、今もあの大きな大仏の前に立つと敬虔の念を抱くはずである。

つまりは、「心」を生むのはひとりひとりの人なのだ。
仏像なら、彫り師はもちろん「心」を込めて創るが、それを拝む人の「心」は、拝む人それぞれが「心」を生み出している。

テクノロジーは、技術であるとともに、表現として、つまりは想像を実現するための道具として考えれば、創る側の「心」とともに、見る側の「心」を生み出すことができるのではないだろうか。

時代の中で「心」を伝える。
時代が変われば、人はその時代に合わせて、新しい「心」の表現を考え、生み出していく。

奈良の大仏によって、どれだけの人の「心」が助けられただろうか。
テクノロジーはバーチャルではなく、リアルの上でテクノロジーは存在する。
そういうことだと思う。

※写真は、中国、南京牛首山文化旅游区にある、釈迦の骨が納められているという、最新のテクノロジーで創られた禅寺。仏陀の歴史が巨大な空間で繰り広げられ、地下の大空間は曼荼羅の宇宙がある。テクノロジーによって仏陀を伝えている。

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