Nさんからイラストを頼まれた。
ここのところ、イラストの仕事は受けていないので断るつもりでいたが、そのイラストというのが、古賀稔彦さんの名前のついた少年少女柔道大会に向けての古賀さんのイラストだった。
古賀さんとはいくつもの想い出がある。
仕事はもちろんのこと、プライベートでも飲みに行くなど、古賀さんはぼくにとって濃い時間を過ごさせてもらった尊敬の人である。
それを知ってNさんが頼んできたイラストだ。
もちろん断るわけにはいかない。
描きながら、古賀さんとのことがいくつも思い出されてきた。
その中のひとつ。
古賀さの一本背負いは、当たり前だが世界一である。
だがその世界一というのは到達ではないと、古賀さんは話してくれた。
たとえばバルセロナで金メダルを取った次の瞬間、すでに自分は世界一ではないというのだ。
もともと柔道は、相手の予期せぬ技をかけることで、相手のバランスを崩して倒す闘いだ。
だが、近代柔道はテクノロジーによって、出す技はビデオに撮られ研究される。
一本背負いで勝って世界一になったからといって、その次の瞬間は、その一本背負いは研究され、世界一の技ではなくなっている。
世界一を目指すということは、勝った次の瞬間、この技は研究され、次はこう攻めてくるということをこちらも研究しつづける。
そして、その攻めを崩す一本背負いをつねに新たに生み出していく。
その繰り返しで進化していくことが、世界一を目指すということだと。
もう20年前に古賀さんが話してくれたことだ。
古賀さんの言葉はまさに、チャールズ・ロバート・ダーウィンの言葉と同じことを言っていたのだと今更に思う。
最も強い者が生き残るのではなく、
最も賢い者が生き延びるのでもない。
唯一生き残ることが出来るのは、
変化できる者である。
今、ぼくらはすごいスピードでの変化を目のあたりにしている。
もちろん新型コロナの影響は大きい。
だが、考えてみれば、20年前に古賀さんが言ったように、何かを成し遂げようとするということは、「到達」ではない。
成し遂げた瞬間に、それは過去のものとなる。
だからいくつになっても走りつづけていく。
変化は成長となる。
「古賀さん、一生成長」なんだよね。
何か古賀さんを描きながら、古賀さんがあのとき伝えようとしてくれた大事な言葉、思い出したよ。
ありがとう!古賀稔彦さん!