アイデアを形にすると見えてくるものがある

2018-7-31

アイデアを形にすると見えてくるものがある。

想像だけでは見えなかったものが、形にすることで「存在」として、想像では予想もしなかった効果が生まれたり、逆にもっと研究すべき課題も見えてくる。

先月、帝京大学の佐々木研究室と、文星芸術大学の田中研究室で研究、制作したVRマンガは、いろいろな人に見てもらったことでいくつかの課題が見えてきた。

それとともに、マンガというものの新しい可能性も次々に出てきている。

VRの中だけでマンガを展開すると、たしかにマンガの世界に自分が入り込めるもので、どんどんゲームに近づいていってしまう。
だが、今度はマンガ視線で考えると、マンガの表現が無限に広がっていく。

たとえば、「あしたのジョー」のマンガを読んだあとに、泪橋の上に立つことができたらどうだろうか。
ドヤ街が目の前に広がり、橋の下では丹下ジムからサンドバックを叩く音が聞こえてくる。
空は真っ赤な夕焼けで広がっている。
VRで制作すれば、自分自身がその世界に、泪橋に立つ自分が存在することができる。

つまりVRを使えば、読んだばかりのマンガの世界に入り込むことができるというわけだ。
マンガという世界があればこそ、その世界に立てるだけで嬉しくなってくる世界を創ることができる。

また創り手にとっても、3Dのモデリングでマンガを創れば、自分の描くマンガの背景として自由に使えるし、作者の絵の中にVRで入ることができる。
3Dのモデリングは、キャラクターやアクセサリーもモデリングを創ることで3Dプリンターで、マンガ家の絵からフィギュアやアクセサリーだって簡単に制作することができる。

今、そうやってマンガを制作しているゼミ生がいるのだが、ブレンダーで3Dのモデリングを創り、線画化してから、構図を決め2D化したあとCLIPSTUDIOで線画抽出と手描きの線を加えることで、アナログで描いたような背景に仕上がってきている。
まったく見事な、3Dのモデリングから背景を創ったとは思えない、アナログタッチの背景も創れている。
いやいや、ゼミ生のKくんからは教えられる。

このブログで何度も紹介しているマンガでのモーション、ARシステム、今やっているVR、そして研究をつづけているAIと、形を創ることでリアルにマンガの可能性が無限大に広がってきている。

まぁ、こういったことをやっていると、「それはマンガではない」「マンガとは読者のリズムで、見開き効果、めくり効果を持って存在するもの」といった、「マンガとは!」といったマンガ論を語る人が必ず現れる。
だが、創り手が「これはマンガです」といったら、それが新しいマンガでいいと思っている。

そもそも「何々とは!」と語る人は、存在する形にこだわり、概念と常識で、その形に留めようとする人たちだ。(自分にとってその方が都合がいい人たち)
つまり、形の外のものは認めたくない人たちである。

それでは成長はない。
それどころか、時代は成長し変わっていくわけだから、「留まる」は現状維持ではなく「後退」だとわかっていない人たちかもしれない。

マンガを創るということは、表現することに他ならない。
その表現がテクノロジーによって、新しい表現ができるのならば、新しい、だれも見たことのない、感じたことのない新しい表現を生める「今」にぼくたちは生きている。

そう、作家としてこんなワクワクすることはないではないか。

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